人間の感覚を5つに分類した古代ギリシャの哲学者、アリストテレスは触覚を五感の中でも特別な存在ととらえ、「感覚の第一のものとしてすべての動物にそなわる」（心とは何か）と書き残した。私たちは五感で世界とつながっている。目が色を確かめ、耳で音を聞く。鼻の奥で香りを感じ、舌の上で滋味を愛でる。もうひとつの感覚を忘れてはいけない。日本の文化は、肌で感じることを大切にしてきた。その感覚はものづくりや日本語の語彙にも表れている。触覚の不思議な力と楽しさを見つめ直してみたい。